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僕のお尻に尻尾がはえていないのか
尻尾さえあれば!
黒田三郎の「罌粟」という詩の一節。この詩は素晴らしい。この詩を知ったとき、私も本気で尻尾が欲しくなった。黒田三郎との出会いは、高校時代の校長先生のお話しだった。いつも話が短く、本の中から好きなフレーズを紹介してくださるとても素敵な先生だった。私たちの学年が卒業する時であったか。
「 仕事が上手く行った日には
髪をなびかせて帰る
とあなたは言った
どうか今日もあなたが
夕日に髪をなびかせていますように 」
という言葉を餞として紹介してくださった。このフレーズの”髪をなびかせていますように”という優雅な願いに心動かされ、黒田三郎の詩集を借りに行った記憶がある。その中で特に、心に響いたのが「罌粟」だったのだ。
尻尾は無意味なものの象徴と捉える。多分いらないから、人間から尻尾がなくなっていったのだろうな。しかし、無意味なものにこそ価値があると考えている自分にとっては非常に寂しい。それと多分無意味なものをくっつけている方が、人生なんとなく楽になる気がする....。
(2016.07.21)
罌粟
1
私の上にのしかかる
私の重さに
耐えかねて
憤然として立ち上がる
や否や
貧血を起こしてぶっ倒れる
ああ
何時かとおい日に
私は立っていたことがある
ただひとり
白い果しない野の中に
真昼
微かに罌粟が匂っていた
2
ただ愚かにもと思うだけだ
僕は
眼をあけてしまったのだ
真昼の街路で
無言で僕を見下ろしている群衆の中で
それからまた目をとじて
もう長いこと素知らぬ風をしている
その僕の
縮れた髪の毛を微かに風が渡る
ああ 何故
僕のお尻に尻尾がはえていないのか
尻尾さえあれば!
やにわに立ち上り
背中を凍らせる無数の眼の中を
尻尾をブラブラさせながら歩き去るものを
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